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「前来た時も、飲んでいたな。それが好きなのか?」
「はい、飲みやすくて好きなんです」
美味しそうにカルーアミルクを飲む晴斗を見つめながら、愁が声を掛ける。カルーアミルクを少しだけ飲んだ事で、緊張が解れた晴斗は、ふにゃりと笑いながら受け答えするのだった。一瞬だけ目を瞬かせながらも、すぐに悪い笑みを浮かべた愁は、口角を上げて告げた。
「だから、お前とキスした時、甘い味がしたんだな」
意地悪気に笑いながら告げる愁の言葉に、晴斗は思わず咳き込みそうになった。突然、そんな事言われると思っていなかった晴斗は、最初に愁とキスした時のことを思い出してしまい、思わず顔を紅く染まらせてしまう。
「こらこら、そんなに晴斗くんをいじめちゃだめだよ」
そんな慌てふためいている晴斗に対して、助け舟を出すかのように、洋平が酒の肴を持って来ては、二人の前にことりと置いた。酒の肴は、スモークチーズとフライドポテトとチョコレートだ。晴斗は洋平に「ありがとうございます」と告げると、スモークチーズを一つだけ手に取ると食べる。燻製にした香ばしさが口の中に広がり、チーズ特有の濃厚な味に舌鼓を打った。ふと、晴斗は愁が何のカクテルを飲んでいるのかと気になり、ちらりと見やった。愁のグラスには、透明な色をしたものが注がれていた。カクテルではなくて、焼酎か何かだろうかと考えていると、晴斗の視線に気付いた洋平が笑いながら答えた。
「愁はね、お酒が苦手なんだよ」
「おい、洋平。余計な事は言わなくていい」
秘密を教えるかの様に告げる洋平に対して、愁は罰が悪そうな顔を浮かべて嗜める。洋平の言葉に、晴斗は目を瞬かせると、思わずくすりと笑ってしまった
「健康的でいいですね」
「良かったじゃん、健康的だって。愁」
「うるさい」
愁の意外な一面を知る事が出来て、嬉しいと密かに心の中で思ったのだった。そして、二人のやり取りを見ていて、他の客と店員と違い仲が良い事に晴斗は気付くのだった。
「お二人とも、仲良いんですね」
「愁とは高校時代からの友人でね。よく話しているんだ」
「そうだったんですか……!?」
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