5話

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 晴斗は愁と洋平の二人の顔を見比べた。愁の方が洋平よりも年上に見えたのは、洋平の顔が童顔と言われるタイプだからだろうか。高校時代からの友人と聞いて目を見開いて、驚いている表情を浮かべている晴斗に、洋平は人懐っこく口を開いた。 「ちなみにね、僕はゲイでタチなんだよ、晴斗くん」 「おい、俺の客に手を出すな」 「分かっているって。横取りしたりなんかしないよ」  彼らにとっていつも通りなのだろうか、軽いやり取りをする二人を見つめていた。特に気にした素振りも無く、突然告げられた洋平の告白に晴斗は目を瞬かせた。同性が好きだと、公言できる洋平が強いと感じて、晴斗は羨ましくもあり憧れを抱いた。 「だからさ。晴斗くんのお友達で、もしも同性が好きな子がいたら、このお店を紹介してね。僕はね、ただいま恋人募集中なんだ」 「わ、分かりました」  明るく笑いながら告げてくる洋平に動揺しながらも、いつか洋平みたいに同性が好きだと告白できる友達が出来たらならば、『ナイトムーン』へ連れて行こうと思った。最も、晴斗にとって大学の友達にすら「同性が好きなのかもしれない」と言えないでいる為、誰も連れて来る事ができないだろうと、少しだけ寂しく思ったのだった。  それから三人で話をしたりしていると時間が過ぎていき、『ナイトムーン』の店を晴斗と愁は後にしたのだった。愁のとっているホテルまで歩いて行く時に、愁は振り返り晴斗に訪ねた。 「今日は、どうされたいんだ」  訊ねた時の愁の空色の瞳が、妖しく煌めいて大人の色気に、晴斗は酔いしれそうになる。蜜に誘われた蝶の様に、晴斗はおずおずとしながらも口を開いた。 「あなたに任せます。あなたに、抱かれたいです」 「そうか」  晴斗の言葉に愁は満足げに頷いた。そして、悪い笑みを浮かべると、晴斗の耳元で低音な声音で囁いた。 「今日は激しく抱いてやる」  欲情を隠しきれない低い声音に、晴斗はどきりと心臓が跳ねそうだった。見る見るうちに、顔を紅く染まらせた晴斗は、愁を熱っぽい視線でじっと見つめると、こくりと頷いたのだった。
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