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愁の宣言通り、金曜日の夜に激しく抱かれた晴斗は、身体は悲鳴を上げていたが、心はとても満たされていた。土曜日は身体が動かずに、夢見心地になりながら一日中家で過ごした。一日中、横になったおかげだろうか、ようやく日曜日には身体が動いたので、猫カフェのバイトに向かったのだった。
そうして、月曜日になり普段通り、大学へ向かったのだった。大学内で友達やサークルの先輩達に挨拶を交わして、講義を受け終わった時の事だった。その日は、いつも通りの日常が始まるのだと晴斗は思っていた。けれど、その期待は裏切られる事になったのだった。
「在原くん」
声を掛けられて振り向くと、そこに立っていたのは富之だった。一度も話した事は無いけれども、大学内では噂になっている大学生。容姿端麗で女子達に好意を抱かれる冷静な性格をしている影島富之。そんな晴斗とは何も接点の無い富之に、声を掛けられるとは思っていなくて目を瞬かせた。
「どうしたの、影島くん?」
「ちょっと君に用があって。……ここじゃ、話せないから後で、ここに来て」
「うん、分かった」
一体、何の用事があるのだろうかと不思議に思っている晴斗は、富之が指定した場所へとやって来たのだった。富之が指定した場所は、他の人が通ったりしない場所だった。
「遅くなってごめん。それで、何の用かな?」
富之は気にした素振りをみせずに首を横に振ると、口を開いた。けれど、その言葉は今の晴斗にとって、一番聞きたくない言葉だった。
「晴斗くんって、ゲイバーに通っているの?」
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