6話

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「俺は、ゲイでしかもネコなんだ」  その言葉に、晴斗は衝撃を覚えた。富之という大学生は、確かにいつも一人でいたが、女子達から好意を持たれていて、きっと異性の恋人もいて、普通に付き合って、普通に恋愛をしているのだろうと思っていた。まさか、自分と同じ思いを抱いている人間がいるとは思ってもみなかった。その真剣な告白に、嘘偽りは全く無いと晴斗は感じた。何も言えないでいる晴斗に対して、富之は罰が悪そうな表情を浮かべながらも、言葉を続けたのだった。  意外な事実だったが、富之は昔から女性が苦手だそうだ。気付いたら異性から同性を好きになっていた。ゲイでしかも、同性に抱かれたい欲求がある事を、誰にも打ち明ける事が出来ずにいて、ずっと悩んでいた。ある日、ネットで検索した時に、ゲイバーの『ナイトムーン』という存在に気付き、行ってみようと思って向かった。いざ入ろうとすると、躊躇してしまい入る事が出来なかった。いつもの様に『ナイトムーン』の付近を歩いては、『ナイトムーン』へ入る事を諦めていた時に、偶然、晴斗と愁が店から出る姿を見てしまったそうだ。 「在原くんになら、打ち明けてもいいかなって思ったんだ……」 「そうだったんだね……。打ち明けてくれてありがとう、影島くん」 「此方こそ、聞いてくれてありがとう」  きっと、人に対して自分の抱えている秘密や悩みを打ち明けると言うのは、かなり勇気のいる行為だ。今までは近寄りがたかったけれども、打ち明けてくれた事で富之に対して、晴斗は親近感が沸いた。同じ悩みを抱いていた人が、こんなにも近くにいた事に安心してしまった。そんな一人でずっと悩みを抱えていた富之に対して、せめて何かの助けになればいいと思い、ある提案をする。
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