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注文を聞き終えた洋平は、マスターに告げる。マスターは柔らかい笑みを浮かべると、洗練された巧みな技術でカクテルを作り上げていく。晴斗の知らない穏やかな曲調のジャズの音楽が店内に流れた。しばらくすると、カクテルが出来上がった。綺麗なグラスに注がれたカクテルを、晴斗と富之の前にことりと置いた。
「ごゆっくりどうぞ」
マスターがそう笑みを浮かべて告げた。晴斗はいつものカルーアミルクが置かれていた。富之の前には、白色の酒の上に切られたレモンがのせられていた初めて見るカクテルだった。晴斗と富之は、お互いにグラスを手に持つと乾杯をする。そうして、カクテルを一口飲んでいく。
「美味しい……」
「ね、美味しいでしょ。マスターの作るカクテルはとっても美味しいんだよ」
「これなら、何杯でも飲めそうだ」
目を瞬かせながらも、カクテルの美味しさに破顔する富之が目に入った。大学にいる時の富之は、常に落ち着いていて表情が変わらない。けれど、今の富之は子供の様に嬉しそうにはしゃいでいて、晴斗は微笑ましくなるのだった。
「二人とも、美味しそうに飲んでくれて、嬉しいね」
ひょっこりと顔を出した洋平が人懐っこく笑いながら、話しかけてきた。それから、洋平を交えて、晴斗と富之の3人は世間話をするのだった。例えば、大学でどう過ごしているとか、休日はどう過ごしているのか。洋平はバーテンダーだからだろうか、聞き上手でもあり、話し上手でもあるから、話題が尽きずに、とても楽しい時間があっという間に流れていくのだった。
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