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いつもの様に、金を払ってホテルに向かい部屋の中に入る。お互いにシャワーを浴びてからベッドの上で夜明けまでセックスする。愁はそのつもりで、ベッドの上に座っている晴斗の隣に座り込んだ。おずおずと落ち着かない様子で、意を決して、晴斗は愁に向かい声をかけた。
「あの……、愁さん」
「何だ、晴斗」
「今日は、そのしないで……一緒に、俺と寝てくれませんか?」
晴斗の言葉に一瞬、理解が追い付かず沈黙を貫いていた愁に対して、晴斗は慌てて告げる。
「あっ、契約外なら、いいんですけど……!」
そんな晴斗の様子に、愁は無言だったがやがて、低く盛大に笑い出した。初めて、盛大に笑う愁を見て晴斗は驚いてしまう。
「愁さんが壊れた……!」
慌てながらあたふたしながら、どうしたものかと考え込んでいた晴斗に対して、やがて笑いを止めた愁が、晴斗の方に向き直り口を開いた。
「そんな馬鹿げた事を言ってきたのは、お前が初めてだ」
「す、すみません……」
「……だが、金は貰っているからな。客の要望にはなるべく応える」
そう言うと、愁は先にベッドの中に入り込んだ。そうして、シーツを手でぽんぽんと叩くと晴斗にここに来るようにと促してきた。晴斗は目を瞬かせながらも、動揺してしまう。
「し、失礼します……」
晴斗はベッドの中に、おずおずと潜り込んだ。大きいベッドだが、成人男性二人が入るには丁度良い大きさだった。晴斗が華奢な身体つきをしているからこそ、はみ出すことが無くすっぽりと収まっていた。愁は晴斗の事を引き寄せると腰に手を回して抱きしめる形を取る。抱きしめられて、晴斗の顔は真っ赤に染まりドキドキと心臓の鼓動が脈打っていた。そんな晴斗に対して愁は低く笑いながら、晴斗の頭を優しい手つきで撫でる。愁の温かな体温と優しい手つきに、晴斗は段々と眠気を誘われるのだった。うとうととしながら、晴斗は愁に対して挨拶をする。
「おやすみなさい、愁さん」
「あぁ、おやすみ晴斗」
いつもよりも優しい声音で告げられる言葉に、晴斗は安心感を覚えて眠りの世界に旅立つのだった。
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