7話

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 ふと、晴斗の意識が覚醒する。ぼんやりとした思考の中で、隣を見ると愁が眠っているのが目に入る。すやすやと寝息を立てて眠っている愁の姿は、起きている時の印象と比べて、何処か幼い感じがすると晴斗は感慨深げに思った。  傍に置いてあったスマホを見てみると、時刻は午前三時で真夜中だった。愁と一緒にいられる時間がまだある事にほっと一安心しながらも、晴斗はふと自分の中でわいた疑問をぽつりと言葉に零していた。 「……どうして、愁さんはこんな事をしているんだろう」 「……知りたいか?」  晴斗の零した言葉に、答えが返ってくるとは思っておらず、晴斗は目を見開いて驚いていた。慌てて声のした方向を見ると、そこには既に目が覚めていたのか、空色に輝く瞳を開けた愁が、晴斗の方をじっと見つめていたのだった。 「お、起きていたんですか……!?」 「お前が、俺の顔を食い入る様に見ていた所からな」  悪い大人の笑みを浮かべながら告げてくる愁に対して、晴斗は羞恥心に顔を紅く染めらせる。そんな晴斗の様子を愛おしそうに見つめながらも、愁は何処か遠くを見るようにして、そっと視線を落とすとぽつりと言葉を零した。 「……金さえあれば、何でも出来るからだ」
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