9話*

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9話*

 太陽が沈み、満月が浮かぶ金曜日の夜。いつもならば『ナイトムーン』の飲酒店に行っていた晴斗にとってみれば、家の中で過ごす事は珍しいと思った。カーテンを閉める為に窓に近付いてみると、真っ暗な夜空が広がっていた。まるで、晴斗の心を表しているかの様な真っ黒な夜空。沈んだ気持ちを抱えながら晴斗は、カーテンを閉めると、ベッドの上に転がり落ちる様にして潜り込んだ。  何かをする気にもなれなくて、ぼんやりとしながらも早く寝てしまうと考えて、目を瞑った。けれども、寝ようとしていた身体は中々眠れず、むしろ、身体が疼いてくるのが分かる。段々と熱が篭って来て、晴斗は、色っぽい吐息を吐きだしてしまう。いつも愁に抱かれていた身体は、愁のことをひどく求め始めていた。晴斗は、悶々としながらも寝ようと思いさらにベッドの中に潜り込む。けれども、中々寝付けずにいて目が覚めてしまう。  結局、ベッドから起き出した晴斗は、冷たい水を飲んで身体を冷やそうと考え、台所に向かおうとした時だった。玄関からチャイムの鳴る音が聞こえてきた。こんな時間帯に、一体誰がやって来たのだろうかと思い当たる節がなかった。
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