3話*

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3話*

 男性に誘われて、晴斗は街中にあるホテルへと連れて来られた。手慣れた動作でホテルにチェックインすると、男性のエスコートで部屋の中に通される。晴斗は、おずおずと部屋の中に入ると、落ち着かない様子できょろきょろと辺りを見回す。そうすると、背後から入って来た男性は低く笑いながら「シャワーでも浴びて来い」と告げてくるので、晴斗は「分かりました」と頷いて、シャワー室に入る。  温かいシャワーを浴びながらも、心臓はどきどきと鼓動が脈打っていて落ち着かなかった。晴斗は、相手に失礼の無いようにと、なるべく丁寧に身体の隅々まで清めていく。今からする行為に、不安と期待の気持ちが入り混じり、晴斗は戸惑ってしまう。シャワー室から出ると、ホテルで用意された寝間着に着替える。ソファーに座って寛いでいる男性の姿が見えたので、声を掛ける。 「あ、上がりましたよ……」 「そうか」  そう言うと男性はソファーから立ち上がると、シャワー室へ向かう。すれ違う途中で、男性は悪い笑みを浮かべて晴斗の耳元にそっと囁く。 「ベッドの上で良い子に待っていろ」  その声音に、どきりと晴斗の心臓は跳ねて顔を真っ赤に染めてしまう。男性に言われた通りに、おどおどとしながら晴斗はベッドの上に座り込んだ。静かな部屋の中では、シャワー室からシャワーを浴びる音が聞こえてくる。  どれくらい時間が経ったのだろうか分からないが、男性がシャワー室から出てくる。高級そうなスーツを着込んでいた男性は、ズボンを着込んで上はワイシャツだけしか纏っていない。ベッドの上でこじんまりとしながら座っていた晴斗の隣に、男性が座り込んだ。そして、そっと手を伸ばしたかと思うと晴斗の顎を掴んで視線を合わせる。空色の瞳と蜂蜜色の瞳が交わる。男性は口角を上げながら晴斗に訪ねた。 「お前は俺を買ったんだ。……どうしてほしい?」 「えっと……、キス、したいです……それで、俺の事を、抱いてください……」
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