第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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事務所が二階にあるのが外からもわかると階段を上がって行くので、俺は後ろからついて行った。見るつもりはなく無意識で上を見た時に曜子の太ももに目が行ってしまったので直ぐに足元に向き直して階段を上がった。 二人が事務所入り口前に立つと 「今、私のパンツ見たでしょ!」 「パ、パンツは見えてないよ!」  顔の前で手のひらを左右に振って全力で否定した。嘘ではない、ただ太ももは見てしまったが事故で故意ではないし太ももを見たかどうかは聞かれてないので答えるつもりもない。聞かれる可能性もあるので俺は急いで事務所の扉を開けた。 「ただいまもどりました」 「おーお疲れさん。曜子ちゃん久しぶりだね、よく来てくれました」  所長が出迎えてくれる。太ももの話題が消えたと安堵に包まれたのは言うまでもない。 「アイツももうすぐ着く頃だろうからソファに座って待っててよ」  時計を見ながら言う所長に従って曜子はソファに座って待つことにした。俺はそれまで今日の業務の事務処理をしておこうと思い自分の机に向かった。 「曜子ちゃん、スポーツ何かしてたの?」 「中学の途中まで水泳を少し」 「そーなんだ。ウタルがね、曜子ちゃんスタイルいいんですよーっていっつも言ってるんだよー」 「ちょ、言った事ないですよ」  突然所長は何を言い出すかと思えば。さっきの太ももの指摘が消えたと思ったがそれ以上の(けだもの)を見る曜子と梓さんの眼差しが痛かった。     
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