第一章 夢から覚めたら

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 そこで諦めるかどうかは本人次第なのだが。誰でも時間は必要不可欠だと思う。  その時間が人生で取り返しがつくかつかないかは誰もわからないのだが。  俺はニートになって一年くらいだらだらして二年目から重い腰を上げて就職活動をしたが現実は厳しかった。  大学中退と一年のニートがやはり印象が良くなかった。当然と言えば当然だが。  貯金もあったし、すぐに就職できると安易に考えていたので大学を中退してからはバイトもせず呑気に過ごしていた。  今思えば、その呑気さが命取りになって今に至るわけだが。  後悔しても始まらない。  まだ若いんだし、奨学金も返せない金額でもないし、やる気があればなんとかなる。  そう思えばこのチラシに書いてる求人募集で明るい未来が開けるかもしれない。  立ち止まってそう考えていた俺は振り返ってチラシを渡してくれた女の子に感謝をした。  こんな事を言える立場じゃないが、頑張ってチラシを配って君も夢があるなら夢をつかんでくれ。  ガラにもないことを思いながら彼女を見ていたが、前を通る人たちにチラシを配る様子もなくただ、突っ立っていた。  メイド服を着たツインテールの女の子が無表情で突っ立っている。 「頑張れバイト、仕事しろよ」  俺は思わず呟いてしまった。
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