第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 待て待て、俺はケーキを買うのに店内に入ってあれこれと悩むタイプではない。ズバッと決めて店員さんに「コイツ、デキる」と思わせること風の如し。  俺はシュークリームを注文することにした。個数はもちろん二個。いやちょっと待てよ?曜子に二個とも食べられる可能性も無きにしも非ず。俺はイチゴのショートケーキとチョコレートケーキを追加注文した。  これでよしんばシュークリームを二個食べられたとしてもショートケーキはどちらか余るだろう。これが策士ウタルのケーキ殺法じゃい!おっと、思わずニヤッとしてしまった。ショーケース越しにいる女性店員さんに俺の心を覗かれそうだぜ。まるで女性店員さんが可愛いからニヤッとしたと期待持たせてしまっていたら失敬失敬。俺の事は忘れて良い人を見つけるんだな。  だがちょっと待てよ?四個という数字はあまりよくないな。それにご両親がおられたら「つまらないものですが喉には詰まらせないでください」と渡さなければなるまい。だとするともう少し買い足していくのが大人のたしなみというものだ。  プリン。そうだプリンにしよう。おっと、JRのキャッチフレーズ並の意識に残る有能な言葉を自然と発してしまう自分のエンターテイメントが怖ろしい。気を取り直してプリンを二個買うこと山の如し。 「ご注文はお決まりですか?」     
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