第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 俺は慌てて注文をした。なかなか注文しなかった静かなること林の如くな俺に嫌な顔一つせず、ニコニコと対応するこの店員、デキる!  注文したケーキ達を待ちながら店内を見渡すとある張り紙に目が行った。  『近日、気持ち的にリニューアル』  一体、どういう意味なんだ!気持ち的ってなに?何が変わったか近日、確認せねばなるまい。は!?もしやこれがこの店の罠か!?意味深な張り紙でリピーターを増やす作戦か?まんまと俺はその罠にドハマリするところ火の如くだったぜ。だが敢えて言おう。ケーキが美味しかったらそんな罠を気にせずとも再び来るであろうと。そしてこの店の発展を願いこの店の為に何度も来る。そう我こそは、リピーターパンである! 「お待たせしました」  張り紙のことなど聞けるはずもなく俺は商品を受け取り店を出た。 「また会おう」  夕日のガンマンで言いそうな気がする適当なセリフを残して立ち去った。もちろん頭の中でだ。  道中、俺はどれを食べるべきか曜子の家に着くまで真剣に悩んでしまった。  スキップする程若くはないが足取りは軽かった。  この感情が胸踊る気持ちと表現してもあながち間違いではないだろうと初めて思ったのは、中学生の時のキャンプファイアーの頃だった気がするが忘れた。
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