第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 家に着き、玄関を開けると曜子の靴が並べられているのを確認することで帰宅していることが認識できる。  俺が訪ねるのを分かっている日はインターホンを押してわざわざ玄関まで降りてくるのが億劫(おっくう)という理由で「お邪魔します」の声かけだけで部屋に上がらせてもらう。  曜子の部屋に入る時にノックをして了承を経て入るので、まさかの着替え中に入るという所長が喜びそうなハプニングに遭遇することはなかった。  今日は仮に機嫌を損なう出来事があったとしても一発で解消できる甘い食べ物(アイテム)があるので心強い。  いつも淹れてくれる紅茶が今日は特に待ち遠しく感じながら階段を上がったのだが、残念ながら紅茶どころか持参した甘い食べ物(アイテム)達でさえも出番はなかった。  曜子は左腕で顔を覆ったままベッドに横たわっていた。  いくら気心知れた中でも誰もいない家で二人っきりになる時にベッドに上がることは今までなかったのは意識してのことだろう。  気分でも悪いのかと思ったが、どうやら違う理由で横たわっているのが分かったのはテーブルの上に置かれてた順位表が教えてくれた。 「最悪だよぉ」     
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