第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 やっと開いた小さな口から出たか細い声は順位表の内容に納得せざるを得ない。 「あんなに頑張って勉強したのに……」  必死に泣くことを堪えているようだった。  やはり一教科が八十点代以外は全て九十点代だった。  素晴らしい点数なのは間違いないのだがクラスでの順位は最下位だった。  進学クラスでレベルが高いとは聞いていたがここまでとは想像していなかった。  普通科クラスなら間違いなくトップの点数だろう。  しかし同率順位でも一位は一位だが同率順位で複数居たとしても最下位は最下位なのが悲しいかな現実なのだ。  約束の一桁が無理だったとしても十番代なら後は家庭教師である俺の教え方の問題と理由を付けてでも旅行に踏み切る程の点数を取っている。  本人も点数に伴った順位に自信あったはずで約束の旅行も確信を経ていたのではないか。  その確信が足元から崩れていったのだから相当なショックだと言うのはわかる。  現に順位を家庭教師である俺の責任だと一言も言わないのが物語っている。 「やっぱり私はお兄ちゃんみたいに出来ないし、お父さんに見切られても仕方ないんだよ」  目標が高く少しでも近づいたと思っていたのが蓋を開ければ距離が更に広がっていたといことか。 「ごめん、今日は勉強無理だわ」     
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