第一章 夢から覚めたら

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 ─3─   ニート脱出   「んじゃあ採用です」 「へ?」  言葉の意味と喜びを理解するのに、俺は幾らかの時間が必要だった。  廃れた商店街の裏道に建つ、これまた廃れた雑居ビル。  駐車場になってる一階部分の端にある入り口用の階段を上って二階の部屋で俺はこの会社の採用試験を受けていた。    自ら望んでここに来て、望んだ返事を貰ったのに間の抜けた言葉を発したのは、俺に2年というニートの生活の引け目があるからかもしれない。  そう思ったが、それにしてもここに来て5分位で採用と言われたら例えニートでなくても驚きの返事をしてしまうのではないか。  ただ、普通の就活生や転職組なら驚いても間の抜けた言葉は発してないかもしれない。  2年間のニート生活で社会から遠ざかっていた甘さゆえに無意識に出たのだろう。 「とりあえず採用だからリラックスしてよ。コーヒーか紅茶どっちがいい?」    どちらも好きでどちらでも良かったのだが、選択を求められたら決断をするのが俺のマイルール。なので俺は紅茶を選択した。 「紅茶切れてるからコーヒーでいい?」     
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