第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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「曜子ちゃんも今度コスプレに誘ってこっちの世界に入ってもらおう」 「無理無理無理無理、絶対駄目ですからね!」  梓さんは本気か冗談か突拍子もないことを真顔で言うから怖ろしい。 「いいねぇ!」 「絶対言うと思いましたよ」  所長は乗り気である。 「女子高生コスプレイヤー。法的には大丈夫なんかね?」 「大丈夫でもなくても絶対駄目ですからね!しかも受験生だしそんな余裕ありません」 「じゃあ女子大生コスプレイヤーになるまで我慢するか?」 「女子大生になっても駄目です」  所長は本気で誘いそうだからもっと怖ろしく油断できない。 「断固否定するがお前ら付き合っているのか?」 「え?付き合っていませんよ?」  所長の突然の質問に慌てて返答するが、答えに考え悩むほどの時間は必要なかった。 「じゃあどう思ってんの?」  次の梓さんの質問には考えても直ぐに答えは出てこなかった。 「大切な()ですかね」 「ダメよ。そんな答えは童貞が必死で考えて出た答え丸出しよ」  なんでここで童貞が出るのかわからないが、経験豊富な年上女性の意見は尊重するに値するのは間違いないだろう。  しかし、曜子と普通に接してきて改めてどう思っているかなんて考えたことがなかった。     
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