第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 曜子との年の差的には俺と梓さん位の差なのだが、相手が学生ってなるとむやみやたらに手出しはしてはいけない責任感みたいなものがあるな。まぁ高校生の時も女子と付き合うなんてチャンスは無かったんだがな。 「好きでも彼女でもないのにコスプレには拒否権を主張する親心」 「えぇ」 「家庭教師という近い立場に居ればその男が良く見えてくるもんだぞ。家庭教師が終われば曜子ちゃんも悪い夢から醒めるんだ。射止めるなら彼女の感覚が麻痺してる家庭教師してるうちだぞ」 「詐欺みたいなもんじゃないですか!それってフェアじゃない!」  所長は俺の横に座って肩を抱きかかえて 「ウタル、早めに女を知って大人になれよ」 「わ、わかってますよ!」  俺は残りの紅茶を一気に飲んで恥じらいと現状を誤魔化した。 「所長だって彼女居ないんですか?休みだってのに仕事ばかりじゃないですか」 「俺の恋人は仕事みたいなもんだよ。寂しくなったら梓ちゃんが慰めてくれるしな」 「ウタル、アンタそれを信じてたら地獄まで突き落すわよ」 「何故に俺が!?わかってます!所長の冗談です!わかってます」  二人の相性は悪くないと思っているのだが、梓さんの拒否の仕方からして仕事以上の関係はこの二人にはないのかな?それとも表向きに感情を押し殺しているのかもしれないが俺が立ち入れる事ではないので考えるのをやめることにした。     
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