第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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「怠慢がやがて隙を生むことを忘れるな」  所長は続けて教えてくれた。今の俺は感心するほど成長していると言ってくれた。だがやがて成長が緩やかになった時に自分は強いと錯覚を起こし慢性的な訓練で成長を怠るようになると。  人は上手くいってる時は悪い事は考えないものだ。考えても耳に入らないからだ。  上手くいくことが永遠に続く筈はない。常に状況判断を冷静に分析できるように心掛けよと。  所長は剣術訓練の事を言ってくれてると思うのだが、今の俺には曜子の家庭教師の事にも当てはめてしまう。  上の空で訓練しても身に入らないし、油断ではないが集中できずに強力な"W"と対峙した時に命取りになってしまうので切り替えていかねばならないと引き締めた。 「お前は飲み込み早いし素質もあるから今度新しい技を教えてやるよ」  有難うございますと礼を言ったが、この時は剣術の新しい型だとい思っていたが実は特殊武器(ブラックソード)の新しい使い方、と言うより本来の危険な使い方だった。  この後、所長にあの技を教えてもらっていなかったら俺は死んでいただろう。 「技を覚えたのはお前だから命拾いしたのも自分のおかげだろ」     
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