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命の恩人になってもこう言って軽く流してしまうのが所長の懐の深さだろうか。
只、この時はまだそんな危機感を持つ筈がなく過ごしていたのだが。
水曜日、空の雲行きは怪しかったが、心の中はまるで恋人の連絡を待つかのように期待しながら業務をこなし一日を過ごした。
だが今日も連絡はなく俺の期待は裏切られたのだが、思いがけないところで曜子に会いに行く口実ができたのだった。
それは夕方、事務所に訪れた相変わらず男の俺が見てもイケメンだと納得する私立探偵の豚平さんが口実と言う名のペンダントを届けにきたのだ。
「ごめんね遅くなって。分析は早くに出来てたんだけどね、思ってた通りだったよ」
ソファにコーヒーを淹れてくれた梓さんが最後に座って四人でテーブルに置かれたペンダントを眺めた。
「驚いたよ。まさかとは思っていたけど本当に月の欠片だったよ」
月の欠片という名の石かと思ったが本物だと豚平さんは言った。
本物ということと、本物だと分析できる豚平さんの二つの事に驚きを隠せなかった。
「ちょっとね」
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