第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 そんなことできるのですかと尋ねた俺に対して、笑顔で答える豚平(ぶたひら)さんは自慢するわけでもなく、サラッと言う姿に只のバイセクシャルなイケメンと思っていた俺の印象は消え失せた。  所長があの時信頼してペンダントを預けさせるわけだと納得した。  豚平(ぶたひら)さんが言うには随分昔から存在していたのではないかと言うのだ。約三千年前という言葉には正直簡単に受け入れるわけにはいかなかったが。  例えば石が地球に落ちてきたのが約三千年前なら話がわからないでもないのだが、石の加工部分を分析した結果、つまり加工してから約三千年と言うのだから信じ難い。  それに石の素材が月の物ってこと。何故月の石が地球にあるのか。あとは仮に数千年前の物だとしても曜子の御先祖様が代々受け継いできたのが本当なら国宝どころの騒ぎじゃないんだが。 「石の種類自体は月ではそんなに貴重な種類ではないんだけどね。加工から読み取れる約三千年前っていうのが本当ならこの石の歴史が貴重ってことだよ」 「歴史を紐解くことは難題だが、何かの力が働いて肉眼で"W"が見えるようになったということだな」  決して冗談で言ってる様子はないのだが、話が飛躍して未だに信じられないでいた。  ペンダントだけなら長い歴史の中で渡り渡って曜子の御先祖様の手に渡るのも可能性はあるが、鏡も一緒にあるというのが偶然ではないということで話は纏まった。     
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