第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 豚平(ぶたひら)さんは鏡も見て分析したいと言ったが、流石に鏡もってなると素直に「ハイ」と持ち出すこともできる大きさでもないし、曜子も不安がるだろう。今のところ危険が及んでいるってわけでもないので鏡は諦めてくれた。  これは僕の想像の範囲内なのだがと豚平(ぶたひら)さんは前置きして持論を述べた。  つまり、古来より魔物から身を守るために月の欠片が使用されていたと言うのだ。俺たちは"W"を倒す為に特殊な眼鏡でその存在を確認して成敗している。逆転の発想で現代の"W"のような古来の魔物の存在を月の欠片で確認して身を隠していたのではないだろうか、ということだった。  確かに魔物の確認ができなければ魔物に殺される、戦う術が無いのなら逃げて身を隠す。どちらも眼で認識できれば出来ることだ。 「あの神話か・・・」 「僕もそれを思っていたんだよ。だとしたら後一つ・・・」  神妙な顔つきの二人の会話を遮るように外で雷が鳴り雨が本格的な夏の到来を知らしめた。
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