第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

27/72
前へ
/217ページ
次へ
 初めて出会ってから一週間会わなかったことが無かったことに昨夜気付き、久々に会える事がこんなに心が弾むような気持になるとは思ってもいなかった。  返すペンダントが無ければまだ今日も会いに行けなかったわけだが。家庭教師を変える話になったらそれはそれで仕方ないのか、まずは会って話して曜子の心境を知るのが先決だ。  俺の余計な考えすぎなだけかも知れないし。男性はこんな時に余計な考えで勝手に悩むタイプで女性はあっけらかんとしているパターンが多いと雑誌か何かで見たことがある。  「機嫌が良さそうね」  紅茶を淹れてくれた梓さんに見透かされたようだった。俺が今日ペンダントを返しに曜子と会うことをしっているからだろう。  「私も昨日、久しぶりに彼氏と会ったのよ」  「え?所長の話は冗談って言ってたのに、本当は彼氏いたのですか?」  所長は冗談と言ったが彼氏がいるのは冗談ではなかったのかな。自分から彼氏の事をいう梓さんが意外だが、久しぶりに会う嬉しさの余りからなのだったら今の俺は気持ちがわかるような気がする。  「梓ちゃんの顔みたらわかるだろ?十分タンパク質を摂取したような肌ツヤ」  所長のセリフに朝も夜も相変わらずなく一日中の変わらないようだ。  「本当にいると思う?」  「いると思いますよ」     
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加