第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 自分の機嫌が良いと人の幸せも素直に受け入れやすくなる単純さはまだ俺が未熟な子供ってことだろうか。  性格は相性だからわからないが顔も良しいナイスなボディだから身長が低いのが気にならないなら、梓さんを独占できるのは一男性として羨ましく誇らしいことだと思う。  「熱っ!」  後ろで所長が飲みかけの紅茶で下をヤケドするかのような声がしたのは恐らく、先程のセクハラ発言を見越してのことだろう。  わざわざ所長のだけを沸騰させている姿を想像するだけでシュールだなと思いながら俺はカップを口に近づけ勢いよく紅茶を含んだ。  「あっ!つっ!」  「私と彼氏の夜の営みを想像したでしょ?」  そうさせるような話題に振ってきたのは梓さん本人の気がしたが、所長のセクハラ発言が無ければ夜の想像はしてなったかも。所長のおかげで俺まで熱湯紅茶を頂く羽目になった。  「今夜飲みにでもいくか?」  「考えておきます」  巻き沿いにしたのを少し悪気を感じたのか飲みに誘ってくれた所は、なんだか可愛らしい部分だと思って笑ってしまった。    ※  仕事を早めに切り上げたので五時過ぎには曜子の家に着きそうだった。事前に連絡して気持ちの整理がついてないのに身構えられてもやりにくと思ったからだった。     
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