第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 手ぶらで行くのもなんだか変だと思ったので、前回のリベンジではないが甘いもの達を買っていくことにした。  自分の分も買っていくと長居する気と思われると恥ずかしいので今日は三個にしとこう。曜子とご両親のだけだ。けど翌日兄の所に持っていくかもしれないから四個にするか。しかし数字が悪いので五個にするか。それじゃまるで俺の分みたいだな。  馬鹿なことで悩んでいる間もケーキ屋さんの可愛い店員さんはニコニコしていた。女性は笑顔でいるだけで華があっていい。恥ずかしくて目は合わせられないが。  結局五種類の甘いお菓子達を持って曜子の自宅に向かった。ペンダントも忘れずに胸のポケットに仕舞っているのも再確認して。  一週間ぶりに来た家の玄関で大きく深呼吸をしたが、なんでこんなに高揚してるのだろうか自分でも不思議だった。  今日は呼ばれて来たのではないので一応インターホンを押した。流石に勝手に入って部屋に行けばそのことで余計に怒られそうだからだ。よりによって着替え中だったりしたらまた変態呼ばわりされるだろう。それも久しく聞いてないが、一歩間違えれば通報されるから気を付けないと。     
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