第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 今日は母親がいるから早めに支度しないだけか、外食でもするのかなと考えていると、紅茶とコーヒーのどっちが良いかと尋ねられたので紅茶と答えてリビングに飾ってある家族写真に目をやった。  本当はコーヒーでもどちらでも良かったのだが、どちらか選択を求められた時は必ず希望を答えることにしてるのは俺のマイルールだ。  運ばれてきた紅茶とケーキを遠慮なく頂いた。自分の手土産を出されて遠慮していてはかえって気を使わすと思ったのと、正直美味しそうだったからだ。  俺はこないだのテスト結果とそれまでの曜子の努力の仕方などを話したが、今回の順位に関しては何も不満はないとの返答だった。  もう少し踏み込んで、母親に憧れて看護師になるのが夢と言う話もしたがそれも承知している様子だった。  しかし、医者になる親の期待に応えらえず生じた歪みについて聞いてみた。  「……そのことは本当に主人も後悔しているんです」  ひょっとしたら曜子の勘違いの可能性もあるかと期待したのだが、どうやら歪は事実だという確証を得ることになった。     
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