第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 物静かなリビングでもやっと聞こえるような小さな声で謝ったのは俺に対してだろうか。そんな疑問を持ったと同時にリビングに入るドアが開いた。  曜子かな?と嬉しさを抑えドアの方に目をやるとしらない男性が立ってこっちを見ていた。  今いる場所を考えてこの男性が曜子の父親だろうとは直ぐにわかった。父親の方が俺を誰か理解するのに時間を有するだろうと思い、立ち上がって自己紹介をした。  納得はしたようだが、少し泣いている様子の母親の状況を説明するのは難易度が高く、父親の出方を伺うことにした。  だが、曜子の話を思い出せば両親との歪というより特に医者である父親との歪が大きいのだろうと思い、もう一度母親に話した内容を言うことにした。  もしかしたら男親なら余計なことはするなと言われる可能性があるからだ。しかし両親共に納得した上で修復に買って出なければ意味がないからだ。  「ありがとう。君は本当に良くやってくれていると家内からも聞いているよ」  どうやら俺とのことを母親には良いように話してくれていたのがわかった。直接言わなくても母親から父親に間接的に伝わると見越してのことだったのかもしれない。  曜子なりに、父親との歪の解消方法を考えていたのかもしれないな。  「もっと早くに曜子も君みたいな人に出会っていれば良かったのかもしれないな」     
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