第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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―28― カルアミルク 眠らないコンクリートジャングルから光が奪われたら 人は人を想うことができるのだろうか 闇に包まれた世界で人は 月の光だけを頼りに 何処へ向かうというのだろうか ビルの屋上に立つ僕に誰も気づくまい 地上という闇に引き寄せられた僕を 月は照らしてくれるだろうか 月が僕を見ているのではない 僕が君を見ているのだ 手の届かない月に想いを寄せるのは自由なのかい それとも月を我がものの為だけにしたい想いは 全てを敵に回すということかい それで君に届くなら 全てを受け入れよう 地上という闇に触れるまで 君は僕のものだ 何故ならもう誰も僕を止めることはできないからだ その刻が過ぎた後も 月が僕を見ているか 確かめることもできず 僕は()を閉じる
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