第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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「ウタル、お前は今人生で最悪だって思っているだろ。周りの人より誰よりも不幸だって思っているだろ」  全くその通りだった。知らない誰かなら良かったということではないが、なんであんなに元気で勉強も頑張っているのに病気に侵され死んでいかなければならないのだ。考えただけで俺は人生最悪のショックだったんだ。  一年持たないかもしれないと言われている曜子の気持ちを考えると、一日一日が本当に貴重な一日になってくる筈だ。  俺が無駄にしたニート時代の二年間をあげれるならあげたい。俺はなんて無駄な時間を過ごしてきたんだと自分自身を責めていた。 「人生、今より悪い事が起こるかもしれないし、今が最悪でこれから良い事ばかり起こるかもしれない。一番いけないのは過去を後悔ばかりして前を向かないことなんだぞ」  慰めの言葉が()みるが、切り替える力が俺には足りない。 「悪い事が起こった時こそ、これから良いことが起こるという気持ちを持つ。良いことが起こった時こそ、心引き締めて悪い出来事に備える。この(ことわざ)、なんて言ったっけ?」  所長はド忘れしたのだろうか、マスターに聞いたが教えてくれない。     
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