第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 ―28― 死をも恐れず乗り越えて 俺達二人はタクシーに乗って港に急いだ。  港で麻薬取引の捜査ってあぶない警察シリーズみたいだろって言う所長に緊張の欠片もなく感じた。  港に近づくとタクシーを降りて言われた倉庫まで歩いて行った。  高級車と言われるような黒色の車が十台は軽く停まっていた。やはりこの現場で間違いないのだろう。  中の様子を見れる場所がないか、倉庫の周りを探索しようとした俺の案を却下して、所長は正面から入っていくと言った。  それはあまりにも無謀です!という俺の言葉は流され見張りがいる正面に所長は歩いて行った。  当然、警戒態勢の見張りが威勢よく所長を制止しようとしたが、その者達は一瞬で地面に倒れこんだ。  鮮やかな所長のブラックソード裁きは目にも止まらずと言いたかったが、俺が成長したのかハッキリと見えた。  俺はこの時、所長のレベルに達している事を実感した。  正面の大きな扉を開け、全員動くなと叫んだ瞬間、倉庫内に銃声が鳴り響いた。  その銃声を皮切りに鳴りやまない銃声。  取引組織同士がやり合っているようだ。  この隙に俺は所長を抱えてタクシーの待つ場所に急いだ。  アルパカ支店はお前に任す。あと俺の全財産もお前に託す……ガクッ。  それだけ言い残して所長は息を引き取った」    
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