第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 八人の男達から一斉に上空に解き放たれた黒い煙は、勢いそのまま所長目掛けて突っ込んで行く。  俺は危険を感じ、自分のブラックソードに手をやったが、その時には"W"は引きちぎれ、構えた時にはすでに地に横たわり、それぞれ浄化が始まっていた。  瞬殺、という言葉を今までの人生で何回使ったかわからないが、この時程瞬殺が的確な表現と思ったことはなかっだろう。 「ウタル、こっちだ」  倉庫の大きな搬入口の横に人間用の出入口扉があった。そこに向かっていたら扉が開き、中から人が除きこむように顔を出してきた。おそらく、外にいた見張りが俺達の確認と同時に連絡したのだろう。  所長は顔を出した男の顔面にブラックソードを突き刺した。  男は地に倒れ”W”が現れたが、またも同じく最初に見た程度の大きさだった。どれだけ極悪人が揃っているのかと呆れる程だった。  一匹だけだったので俺が倒すまで所長は扉の前で待っていてくれた。足が生え揃う前に倒す事ができたのは、俺が成長しているという事だろうと勝手に思うことにした。  中に入る時に鉄板の扉を開きながら所長は俺に言った。 「この扉を盾にして中を見てろ」  俺は出て来た男がしたように逆に顔だけ出して中を見た。所長がそうしろと言った意味は銃声によって直ぐに理解ができた。     
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