第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 倉庫という建物の中だろうか、銃声はかなり大きな音で鳴り響いた。  俺は慌てて顔を引っ込めて銃声が落ち着くのを待った。時間にして数秒だろう。  初めての銃声を聞く驚きと恐怖で、所長の安否に気が回らなかったのだっが、銃声が鳴り止んだので、扉から顔を出して中を見回した。 「もう大丈夫だぞ」  所長の声を聞いて、一安心しながら倉庫の中に入って驚愕した。  銃声は三発鳴ったのを俺は聞いている。中で倒れている麻薬組織の連中は二十人以上はいるのではないいか。  恐らく、いや確実に銃は見知らぬ侵入者である所長に向けられ発砲されただろう。その銃声が三発で済み、かつ全員を倒しているのだ。  テーブルを真ん中に挟み取引をしていただろうと思わせる位置で、連中は倒れていた。 「そうだウタル、お前に新しい技を教えてやる約束だったな」  確かに教えてくれるとは言いましたが、まさか今ですか?所長の呑気さには呆れて地球一周しそうなくらいだった。 「約束はしましたけど」 「良し、ブラックソードを構えてだな」  教えてくれてるところに悪いんですけど、左側に倒れてる組織の”W”が一斉に襲ってきた。  所長はブラックソードを”W”に一振りしてからまた説明に戻った。     
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