第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 こっちも?電話相手の豚平(ぶたひら)さんにも何かヤバイお客さんが来たのだろう。  とにかくあの巨漢の怪力、腰に差した刀、油断できるはずないが戦闘態勢であるのは間違いない。いつもの“W”との対戦とは空気が違う気がした。  たった今、凶悪な“W”と対戦したというのにだ。 「全滅かぁ?使えねぇぜ」  張り詰めた空気に変化を与えたのは巨漢の言葉だった。 「てめぇらがやったのか?あぁ!?」  こちらを見て巨漢の男は叫んでいるが、乱暴な口調が性格の荒々しさを表していた。 「なんだてめぇら!結婚式帰りか!?」 「聞いてるのはこっちなんだよ!」  所長の問いかけに、今度は小柄な方が叫んできた。 「こっちも聞いてんだよ!先に聞くな!」 「所長、煽っちゃ駄目ですよ」  完全に売り言葉に買い言葉で所長に余裕が見られたが平気なのか?俺はそれどころではない。さっきからこいつら二人のプレッシャーに押されている感覚だった。 「ムカつくなコイツら、()ってしまおうぜ、セルフィーオ!」 「慌てるな、ダンパー。どうせならなぶり殺しにしてやるか?」  怖ろしい発言を、愉快そうに言うコイツらは、何者なのだろうか?。  麻薬組織の人間にしては何かが違う、そう人間の姿をしているのに人間っぽくない感じを受けるのだ。     
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