第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 紐状になった腕は先が鋭利になったかと思うと、麻薬組織の連中に狙いを定めるかのようにした後、勢いよく胸を次々と串刺しにしていった。まるで大蛇が獲物を捕獲するように。  半分くらいの連中が串刺しにされただろう、なんとそいつらを竜の大きな口を開けて噛砕き、喰ってしまったのだ。  反対の手でも同じように残りの連中も串刺しにして喰ってしまった。  意識が戻った麻薬組織の奴らの悲鳴はダンパーという竜の化け物の胃袋に消えて行った。 「不味い人間だ」 「よくそんなのが喰えるぜ。おい!お前らも調子に乗ってるとコイツに喰われるぞ!ハッハー!」  おぞましいものを見せられたが、コイツ等にとっては普通のことなのだろうか。 「趣味の悪い奴に喰われたくないもんでね、断っておくよ」 「お前等に断る権利があると思うなよ」  これは完全に殺人体制に入っていることだろうか。そうなったら俺は何ができるのだろうか。所長の足手まといになるだけだったらいない方が良かったのかもと、不安が不安呼んだ。 「麻薬組織(アイツら)が喰われるのを黙って見てたのは、恐ろしくて手が出せなかったのか?それとも、麻薬に手を出した屑は助ける余地がなかったということか?あぁ!?」 「さぁな」  ダンパーと呼ばれていた巨漢の男はその間に元の人の姿に戻って行った。竜か人かどちらが本来の姿なのかはわからないが。     
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