第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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「正義の味方と言っても、悪人は見捨て、勝てない敵には手を出さないってことか?からし屋マタジのエージェントよぉ」  俺は背中が凍り付いたようだった。突然現れたこいつらが平気で人を殺し、しかも喰うような奴らがマタジの存在を知っていることに。 「こいつは驚いた」 「ハッン!」  セルフィーオと呼ばれていた小柄の男は所長の言葉を聞いて得意げに笑みを浮かべた。 「あんなに巨大になっても破れないんだな、その服。伸縮自在に驚いてるぜ」 「貴様ぁ!!」  来る!初心者の俺でもわかるくらいセフィーオの気が大きく爆発しそうなのを感じ取った。  腰に差した剣を抜いたセルフィーオだったが、突然現れた男に制止された。 「お待ちください、セルフィーオ様!ダンパー様もセルフィーオ様をお止め下さい!」 「あぁ!?()ったらいいんだよ!こんな奴等ぁ!」  ダンパーも臨戦態勢に入る。対戦は免れないのだろうか。 「落ち着いてください!お二人とも!我々の任務は隠密情報収集です。戦闘は極力避けよとの命令です!」 「極力ってのは、時と場合によるんじゃねぇのかよ!」  セルフィーオは制止できない怒りが爆発してるかのようだった。 「ダンパー様!」 「フンッ、仕方ねえなぁ。セルフィーオ、まあ落ち着け。殺すのは今でなくてもできるだろう」     
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