第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 それに、所長も“W”が今までより違うことに気付いていたのか。俺が最近入社したのも関係あるのだろうか?それは考えすぎか。 「ぬるま湯に浸かったお前等からし屋マタジ、王の復活まで精々命乞いしてろ」  三人は暗闇に消えていこうとしたが、所長の声で足を止めた。 「王の復活で、この国をどうするつもりだ!」 「破滅にするってさっきから言ってるじゃないですか」  本気なのか天然なのか、この状況で一番恐ろしいのは所長なんじゃないかと思った。 「色々教えてくれたがお前らの情報が古いんでこっちも一つ教えといてやるよ」 「なんだと!?」  所長は後ろに身を隠すようにしていた俺の頭の上に手を乗せて前に押し出した。 「お前らが本気出す頃には五大明王になっている。四人だけかと思って挑んで来たら、逆にうちのウタルに全滅させられているんじゃないのか?」 「このガキが、だと!?」  前に出された俺は、三人の鋭い視線を浴びた。蛇に睨まれた蛙の気持ちがわかるように、奴等三人の目は冷たい感じがした。(ひる)んではいけないと自分に言い聞かせ、グッと相手を見ながら歯を食いしばっていた。  『落ち着け、落ち着け……』俺は頭の中で必死に繰り返していた。 「四大明王の審査基準がお前らなら、今すぐお前を倒して基準クリアしてもいいんだぜ」 「このガキャァ!!」     
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