第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

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 とうとう我慢できず、こちらに突っ込みながら腰に差した剣を抜くセルフィーオが勢いよく斬りかかってきた。  その時、俺は心が落ち着いたのか、周りの雑音が聞こえなくなった。無の状態という表現が正しいのだろうか確かに所長やセルフィーオの声は聞こえるのだが、心の中は不思議な感覚だった。  周りの景色も真っ暗になり、人物だけがハッキリと見えていた。  斬りかかってくるセルフィーオの動きが手に取るようにスローに見える。そんな中でも自分の心は落ち着いていて、ゆっくりブラックソードを構える。  それは『慌てなくても良い』と自分が自分に教えるようだった。  構えたブラックソードからは炎が出てきてソード全体にまとわりつく。  セルフィーオの剣と炎のソードが交差してぶつかり合う。その瞬間双方の力比べになったのだが、俺は即座に押し返した。 「ぐおぉぉぉぉ!」  ダンパーの手が飛ぶ。切断まではしてないが大量の血が吹きあがる。  セルフィーオの剣とぶつかり合った時に、後ろにいるダンパーが手をひも状にするのがわかったからだ。麻薬組織の連中を串刺しにした技でセルフィーオを援護をするつもりだったのだろう。  押し返したセルフィーオが怯んだ瞬間にソードを振り、炎状の攻撃をダンパーに与えていた。     
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