最終章 智慧

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  ―32― 過去は全て現在におさまる    一週間ぶりの再会と言えば恋人同士に聞こえるから言い直せと言われそうなので、口に出さず頭の中だけで言うが、一週間ぶりの再会である。  曜子の部屋に入ったは良いがさて、何から話せば良いのか、何から聞けば良いのだろうか、ここに来るまでに考えていたのだが良い意味と言って良いのだろうか、曜子のテンションに調子を狂わされる。  今に始まったことではないが、今日ばかりは明るいテンションに救われる。たとえそれが、曜子の本心を隠す為であってもだ。  今日から夏休みのはずなのに、どうして制服なのかと尋ねたら、入院中で行けなかったから学校まで私物を取りに行ってたが真面目な曜子は制服に着替えて行くという自慢付きで説明してくれた。  美味しいケーキと熱い紅茶をいただきながら話す内容でもないのだが、話さないと前に進まないので俺は重たい口を開いた。 「お父さんが言ってたこと、本当なのか?」  少し意地悪とも取れる言い方に俺は逃げた。病気とか死という単語を言わずに曜子から現状を聞こうというのだから。     
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