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「それに……、ウタルが家庭教師をしたいって言うし。まぁ結局はペンダントのお陰というか、目的がそれだったんだと思うけどね」
「確かに、最初は肉眼で”W”が見えるからってのはあったけど、縁がなかったら出会ってもいなかったんだよ」
んー、と言いながら納得いかない様子だ。
「じゃあひったくり犯がカバン取ってなければそのまま通り過ぎてたってこと?」
「そういうことだよ。全ては縁なんだよ」
ふーん、と言ったまま黙り込んでしまった。
「全てが縁でウタルとも知り合って、それも全て出会う運命だったってこと?」
「そうだよ、縁も全て運命なんだよ」
俺の言葉を聞いてからしばらく何も言わず俯いたまま、表情は垂れる横髪で見えなかった。
鼻をすする音が聞こえ、様子が変だと気づいた時には曜子はくしゃくしゃになった顔を上げて泣いていた。
「だったらウタルなんかには出会わなかったらよかったのに……」
涙で頬に引っ付いた髪の毛が涙の重さを教えてくれる。
女性が本気で泣いているのに遭遇するのは初めてで、ましてや自分を否定するような発言をされては返す言葉が見つからない。
「な、なんで……?」
そうとしか言いようがなかった。あんなに仲良く接してこれたと思っていたのに、思っていたのは自分だけだったのかと。
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