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「私はあの時、病院で治療するかしないか最後の選択の日だったの!私は治療しないで死を選んだのよ?その日にウタルに出会ったのよ。何も知らないウタルは私の夢の為に必死に勉強を教えて……合格しても卒業まで命が持たないのに……」
泣いてるせいなのか言葉に詰まりながら曜子は続けた。
「私は死ぬ運命だった!その運命を受け入れた日にウタルに出会った!なのに今日までの間、どれだけ運命を憎んだと思う?ウタルとの何気ない日々を過ごす度に死は近づいてくるの。いつウタルに言おうかって思ってても言えなかった……ウタル、一生懸命お仕事して真っ直ぐ生きてるんだもん……」
ゴメン……。自然と出た言葉だった。曜子の事を何も知らなかった俺は、思い返せば傷つけるような事も言っただろう。謝っても取り戻せないが謝るしかなかった。
「……違うの……。ウタルと一緒にいることで、死ぬ覚悟をした自分に嘘をついてることに気付いたから!言ってももう遅いのに!言ったらウタルに嫌われるから!」
俺はポケットからペンダントを取り出してテーブルの上に置いた。全てはこのペンダントから始まったのだ。
「ウタルと離れたくない!死にたくない!一緒に生きていたいよぉ……」
泣き叫ぶ曜子を引き寄せ、強く抱いた。自然ととった行動に驚いているはずなのに、どこか落ち着きを感じながら確信した。
これが、愛しいという感情なのだと。
ずっと胸の真ん中に引っかかっていたもの。
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