最終章 智慧

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 俺は曜子と抱き合っていた。  いつかみた夢のように、水の中にいるよな感覚で  夢と違うのは、抱いているのが曜子だとはっきりわかること 「……ここは?」  目を覚ましたかい?  ここは俺の夢の中かもしれないし、曜子の夢の中かも。二人が同時に同じ夢を見ているのかもしれないし。 「なんで二人とも裸なの?」  わからないけど、もしかすると母の胎内なのかもしれないな 「お母さん?」  ふわふわ浮いて気持ちが良く、不安な心が一切なかった。  人は誰でも母から生まれてくる。俺達が生れて出会えたのも、両親が出会ってくれたからなんだ。今の自分がこの世に存在していることを両親に感謝しないといけないね。  その両親も母から生まれてくる。じいちゃん、ばあちゃんと、ずっとずっと昔があって今があるんだよ。  今から思えば俺達が出会うのは運命だったってこと。遠い昔からの運命だったはずだよ。だけど 「だけど?」  これからの運命は自分たちで切り開いていくものなんじゃないかな。その結果を未来の自分や子孫が運命って決めてくれるんだよ。 「でも、私……」  これから変えるんだよ。未来は今から作られる。今の連続が未来になるんだ。  無理だと諦めてる自分を変えるんだ。死ぬまで諦めちゃいけない。俺もいる。  俺が曜子の未来を今から変えるよ。  二人なら出来る。その為に出会う運命だったんだよ。 「……うん」      見つめ合ってた俺達は互いに瞳を閉じた。
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