最終章 智慧

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 この世界に影響がないのなら、俺が曜子を信じ、曜子が俺を信じてくれるなら異世界転生は二人の中で本当の事実だということ、それで良いのかもしれない。  無事にこの現実世界に帰ってこれた喜びと生きている証として、曜子の夢を叶えるべく俺達は香川県の瀬戸内海に浮かぶ直島に旅行に行った。  高松空港に降り立ち、讃岐うどんを食べて感動し、栗林公園に立ち寄っても感動をした。感動の連続の後、フェリーに乗って念願の直島にたどり着いた。  無知と食べず嫌いを恥じるような感覚に見舞われる程、俺は心に衝撃を得た。良い意味で期待を大きく裏切ってくれたのだ。それほど現代アートというのは人々を魅了し続けていく。  世界中からこの小さな島に集まるのも納得してしまう。  同じ日本に住んでいて、行こうと思えば行ける距離に住んでいるのが当たり前と思う感覚が、外国人旅行者には喉がら手が出る程の感覚なのではないだろうか。  夢を叶えられた曜子の喜びように、俺まで嬉しくなるほどだった。  二人で眺めた夜空を俺は忘れない。満天に浮かぶ星は俺達が下を向いてる時でも見守ってくれているのだ。  じっくりと言うほどの時間はなかったが、それでも一泊二日で直島に点在するアートを堪能した喜びは、かけがえの無い旅行になった。  二日目の朝早く、俺達二人は運良く独占出来たカボチャの前で伝説を信じて願いを託す。     
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