第一章 夢から覚めたら

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 男性はやりたいようにやっているつもりでも、所詮お釈迦様の手のひらの上ではないが女性の手のひらの上で踊らされているものだ。  付き合う前や付き合っている頃も攻撃的な男性が主導権を握っているように思えても女性は冷ややかな目で状況を冷静に判断しているものだ。常に冷静に。  見切りを付けられたら捨てられるのは男性の方だ。見切りを付けれず判断狂って選択ミスをする女性も中にはいるが結婚しても男性は女性の手のひらの上で踊らされるだろう。一生。  過去に俺も女性に痛い目に合わされた。しかしあれは俺がまだまだ未熟者な世間知らずだったからだろう。 「……し」「もしもーし!」  顔を上げると所長がやまびこに声を掛けるかのように俺を呼んでいる。少し妄想に入ってしまったか。しかし妄想にふけってもわずか一秒にも満たないはずだ。 「十秒くらい放心状態だったけど大丈夫か?」  なんという不覚。「殺し屋」と完全に聞こえたのに聞き間違いの妄想で十秒も放心状態とは恥ずかしすぎる。生き恥だ。かくなる上は 「切腹ー!」 「どうした急に。洗濯洗剤のCMか?」 「いえ、すいません」  なんということだ。俺は…「あ、妄想にはいらなくていいから。ちゃんと聞いてね」  三度目の妄想にはいりそうな俺は所長に無理やり現実に戻されてやっと我に返った。
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