第一章 夢から覚めたら

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 現に同じ境遇やより過酷な境遇の人でも人生を挽回している人はたくさんいるからだ。  欲望と悪の心。似て非なるものだが余計な事は考えず仕事として精一杯遂行して俺も人生を挽回しよう。 「ちょっと路地裏の方に移動してみるか」  俺と梓さんは所長について駅から繁華街にいく為に歩道橋を渡っていた。 「キャッ!ちょ、ちょっと!誰かー!」  歩道橋から声が聞こえた下の方を見ると女性が歩道に尻もちついている。制服を着ているから女子高生だというのがわかる。  女子高生が指さす方をみると逃げるように走っている者がいた。ドラマでよく見るパターンだ。確実にアレが犯人だろうとわかる。  じゃらじゃらとキーホルダーが付いたカバンを持って走っている姿を見てひったくり以外の何かに見ろと言う方が難解だろう。 「タイミングいいですね」 「本当は事件は少ない方が良いんだけどな。練習には丁度良いだろう」 「じゃあ行ってきます!」 「お前はアホか」  歩道橋から飛び降りようとする俺に梓さんから指摘があって我に返る。 「仕事で悪を退治する正 義の味方になったつもりでも身体は一般の人間だし、ニートで身体なまってんだから準備体操して行け」 「準備体操してたら犯人が逃げちゃうし準備体操で息上がっちゃいますよ」 「じゃあ階段で行け」     
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