第一章 夢から覚めたら

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 反射的に女子高生の方に振り向いた犯人は俺に対して一瞬の隙ができた。左手に握っていた植木の枝で犯人のナイフを持つ手をはたき、またはたき、はたいてはたいて子供の頃にしたワニワニパニックが脳裏に浮かんだ。  犯人が落としたナイフを遠くに蹴り、特殊武器を犯人の頭上から振り下ろした。  特殊武器は犯人の頭から股まで見事にすり抜けた。日本刀だったら身体は真っ二つになっただろう。すり抜けたが空気を切るのではなく水中で振り下ろしたような感覚だった。  無 我夢中だったが本当に人をすり抜けるというのは異様な光景だった。 「殺したの?殺したの?ねぇこの人死んじゃったの?」  仰向けで倒れている犯人に駆け寄り自分のカバンを取りながら女子高生は聞いてきたが、自分の言ってる内容が穏やかじゃない。しかし犯人から血が大量に溢れていたら軽々しい言葉も口にしていないかもしれないな。 「大丈夫。死んではいない、はずだよ」 「そう。ありがと」
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