第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 所長はからし屋マタジの名刺を曜子に渡した。こんな時はからし屋という表向きの職業が役に立つ気がした。  しかし曜子にはあの“W”の姿が見えていたからからし屋の誤魔化しは通用しないだろ。 「宿敵わさび屋の手先だったんですね、ホント酷い!」  所長の言い訳に共感している?曜子、冗談だろ?そもそも所長の言い訳が子供レベルすぎる。小学生でも信じない言い訳ですよ。 「じゃあそういうわけで曜子ちゃんを怖い思いさせたお礼に、ウタル君が美味しいものを何でもご馳走してくれるから。遠慮しないでなんでも言って頂戴」  結局俺に丸投げですね、所長。領収書切ったら経費で出るのだろうか不安だ。 「じゃあ私、〇〇駅ビルの最上階にある創作料理のコースに出てくるシフォンケーキが食べたい!」 「いーよーいーよー。サフォンでもゴフォンケーキでもなんでも注文しちゃってください」  所長は陽気である。 「いーなー。私も連れてけ」  梓さんは仕事そっちのけである。 「ところであそこに寝てる犯人はどうなるのですか?」 「大丈夫。後はおじさん達が処理しとくから曜子ちゃんは気にしないでウタル君に思いっきり奢ってもらうと良いから」  所長は俺たちの背中を軽く押しながらこの場を離れるように促す。  足りないといけないからと言いながら所長は小声で俺に     
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