第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 ―15― ファミレス 「本当にここで良いのか?」 「うん。ホントはバッグ取り返してくれたお礼に私がご馳走しなきゃいけないんだし」  俺は曜子と二人でファミレスに来ていた。陽子お勧めのシフォンケーキがある店は制服で行くような雰囲気じゃないしまた今度ということでファミレスになった。俺に金が無いようにみえたかな?陽子なりの気遣いだとしたら案外優しい一面があるんだな。 「それにウタル、お金持ってなさそうだしね。フフフ」  前言撤回だな。 「ここ、新しく出来たばかりだから一度来てみたかったの」 「チェーン店なんだし何処も味は同じだろ?」 「レシピは同じでも微妙に違ってくるし盛り付け方で味も変わってくるのよ」 「へー、そうだったのか」 「そんなわ けないじゃん。なんでも信じちゃうのね」  この野郎、と思う前にバカみたいな話を普通に信じた自分が情けなくなる。 「さっきのエメラルダもそう。なんでも疑問にもちなさいよ。フフフ」  陽子は楽しそうに俺をおちょくってくる。少しだけ沈黙があってから 「私、もうすぐ死んじゃうの」 「この流れでその話を信じるバカはいないよ」 「・・・そうだよね。けど、バッグ取り返してくれてホントにありがとね」     
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