第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

7/75

56人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
 こういった連中は群れると態度が大きくなるが、一人になるとそうでもないんだよな。もしくは店員とか自分より確実に弱者には強がったりするが。カッコ悪いって言うのに気づかないのは年頃のせいか躾の責任か。  そんなことを考えながら順番を待ってやっとコーヒーを注いで席に戻ったら少々ご機嫌斜めらしく 「遅かったじゃないの。罰としてウタルのパンケーキ少し頂いたわよ」  俺が頼んだパンケーキにはミントしか残っていなかった。 「美味しかったからさ、もう一度頼むのをお勧めするわよ」 「曜子がお勧めするなら仕方ないね」  少しはご機嫌が直ったようだ。これもパンケーキのおかげなら安いものだ。女性を扱うのは不慣れだから機嫌を損ねた時の対処の仕方なんて甘い物を食べてもらう以外知らないからな。 「さぁさっきの話の続き。黒い奴の正体教えてよ」 「んー。曜子がさっきの黒い奴が見えてること自体が謎のはずなんだよ」 「はず、ってどういうこと?」 「これは特殊に作られた眼鏡なんだけど、さっきの黒い奴は“W”って呼んでるんだけど“W”はこの眼鏡をかけていないと見えないはずなんだよ」 「へー。けど実際私にはしっかり見えたよ。眼鏡もコンタクトもしてないけど」 「おかしいよなぁ。見えないはずなんだけどな」 「はずってなによ」 「いやぁ俺も今日この仕事に採用されてそのまま実習してたから詳しくは分からないんだよ」     
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加