第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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 〇〇学園といえばかなりの進学校だった。三年生なら丁度受験生で大変な時期じゃないか。 「・・・いろいろあってね、悩んでるの。勉強も遅れがちだし。ついて来れない生徒は置いて行く風習のある学園だから、なんとなくね」  明るい曜子の時折見せる悲しそうな表情に俺は自分の無力さを感じながら本当の素顔はどっちなのだろうかと思ったが問いただす程俺達の距離は近くなかった。 「夢、聞いてきたじゃん。私ね、看護師になるのが子供の頃夢なの。お母さんが看護師だったから子供の時に憧れて今でも夢なの。大変な仕事だってことは分かっているんだけどね。大学も決めてたけどね」  けど?過去形になってるのが腑に落ちない。 「私、お兄ちゃんがいるの。すっごく優しくて勉強もできるの。ウタルみたいにイヤラシイ妄想ばっかりしてないんだから」  どうやら曜子の中では俺は常にイヤラシイ妄想をしているオジサンになってるが、兄がいるならその兄と歳はあまり変わらないはずだぞ?それに妄想は常にしてるがイヤラシイ妄想はたまにしかしてないぞ。     
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