第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

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「お父さんは私達をお医者さんに育てたかったみたいでね。お兄ちゃんは医学部に進学したけど私はそこまで賢くなかったから、家の中でも期待外れって感じの空気になって成績落ちてきてもあまり気にもされなくなってね、今もお母さんもお兄ちゃんの世話に付きっきり」  志の高いことは良いことだと思うが、その域に届かないからといって落ちこぼれのような扱いはよろしくない。医学部に入って医者になろうなんて簡単な事ではないはずだ。生半可に息子のの成績が良かったから娘である曜子も出来て当たり前の錯覚になったのだろうか。そうだとしたら厳しすぎる家庭だな。当事者の曜子の話だけで判断はできないが。  家庭環境はどうであれ、成績が落ち続けては看護の大学への進学にも影響が出るんじゃないのか。学校の授業についていけなくて教師や同級生にも引け目を感じながら送る高校生活なんて地獄じゃないか。明るい曜子が本当の曜子ならたまに見せる悲しい姿は極力見たくないと思い自分に何かできることはないか考えた。 「家庭教師になろうか?」  ドリンクバーから戻ってきた曜子はストローでジンジャエールを飲みながらシラケた顔で俺をみる。目が半分程度しか開いてない。わかる、わかるぞその目。ニート時代によく行くコンビニや本屋の店員にされた目だ。確認はしてないがこいつニートだな、と確信をして見下した時の店員の目と同じだ。     
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